すっかりよかた

九州場所千秋楽の数日後、高砂部屋の宿舎では、
冷蔵庫や自転車十数台などを倉庫に運び終えたお相撲さん数人と
助っ人の“よかた”3人が、お昼のお弁当を食べていました。

「今年は寒かったっすね~。Tシャツではいられなかったっすもん」
と言ったのはTシャツ姿のお相撲さん。

その日は引っ越し作業でからだを動かすから、ということだったらしいのですが、
ジャンパーを着込んでいたよかたたちは、目はまん丸、口はあんぐり。
さすがの夫も「お前、Tシャツ着てんじゃん!」とツッコミを入れたそう。

そんなツッコミを入れられるようになったとは、夫もよかた歴が長くなったせいか、
ずいぶんよかた的感覚を身につけたようです。

知り合って間もないころのことです。
大阪に行く前だったので2月の半ばだったと思います。

現役だった夫と食事をしたあと両国の街を歩いていたときに、ふと彼の足元を見ると素足に雪駄
もちろんマフラーもしていないし、着物は単衣で、見るからに寒々しい。
最初は足袋を履いていたのですが、食事をしてお酒を飲んだら暑くなって脱いじゃったんだそうです。

私はというと、厚手のコートにマフラー、手袋にブーツという完全防備の出で立ちだったはずです。
なんたって寒い盛りの2月ですから。

「寒くないんですか~?」と心配そうな私。
「いや、ぜんぜん!」と胸を張る夫。

寒さに強くてたくましい、と思うべきだったんでしょうけれど、
よかたのなかのよかた、そしてとくに寒がりの私には、
あの寒さのなかであの格好は奇妙にしか思えませんでした(^^;)

そんな夫もこのごろは、朝くつ下を履く前にヒーターで温めるような体たらく。
よかた度が大いにアップしたものです。