事務方のお相撲さん

夫の最初の師匠であった元房錦の若松親方には、
弟子に事務仕事をさせるというポリシーがあったようです。
といっても、全員にやらせるのではなく、
選ばれし弟子2、3人が事務仕事に当たっていたといいます。

夫にとって事務仕事は、もっとも苦手で嫌いな類いだったらしいのですが、
大学卒ということだけで、白羽の矢が立ったのだそうです。

仕事の中身といえば、たとえばお礼状を書いたり、封筒に升目の線を引いたり、
ワープロが出始めたころには、その使い方を覚えたり…。

几帳面な性格から親方は、仕事ぶりにも細かく目を光らせ、意にそぐわなければ即刻やり直し。

線引きもお礼状書きも、数枚のことではなく、何百枚です。
なかには線引きがイヤで逃げちゃった兄弟子もいたとか(@_@;)

他人より遅く入門し、からだも小さかったため、そのハンディを埋めようと必死だった夫は
「こんなことをするために相撲取りになったんじゃないのに」とジレンマを抱えていたといいます。

しかしその経験が夫の現在を支えている、
つまり著作活動や部屋のマネージャーとしての仕事の礎になっているので、
いまとなっては、無理にでもやらせ、細かく指導してくださった、かつての師匠に
夫は感謝しているのです。

何が幸いするかわかりません。