秀男さん、白扇を置く

今年の九州場所は、白鵬32回目の優勝で幕を下ろしました。
その白鵬が優勝を決めた結びの一番の触れは、
来月定年を迎える呼出・秀男さんの本場所最後の呼び上げとなりました。
(お誕生日はなんと夫と同じでビックリです!)

秀男さんとは個人的なお付き合いもなければ、言葉を交わしたこともありませんが、
7、8年前の大阪場所で、たまたま同じウイークリーマンションに滞在していたというだけで
勝手に親近感を覚え、以来こんにちまで一ファンとして陰ながら応援してまいりました。

今回、秀男さんについていろいろ調べてみると、興味深いお話に遭遇しました。
ご本人が、ベースボール・マガジン社「相撲」(昭和47年)に寄稿されたコラムによると、
お父さまもお兄さまも教師という環境にあって、ご自身も高校教師になるつもりだったのに、
ある日突然、呼出になろうと決意したのだそうです。

もともと地方の風物に興味があった秀男さんにとって、
日本各地を巡業で訪ねその土地の風土に触れられることが魅力的だったのと、
呼出の格好が好きで、形式ばった行司のそれよりはるかに粋に感じていたのが
決意した理由のようです。

それにしても入門3年目、22歳の秀男(当時は秀夫)さんの文章はこなれていてお上手、
しかも立派な大人の考え方をお持ちで、私自身の22歳のころを思うと恥じ入るばかりです。

いなせに感じていたというたっつけ袴姿は、
秀男さんのためにあるのではないかと思われるほど、お似合いでした。
力の抜けたさりげない立ち居振る舞いに美しさを感じていました。
そして何より、飄々とした佇まいが好きでした。

秀男さんの姿のない来場所の土俵には、冷たい風が吹き抜けそうですが、
その風を払うほどの熱い闘いを期待したいと思います。