物言い~取り直し

第20回大会への出場を決め、稽古を再開したのはやはりその1カ月ほど前。
前年と同じような稽古をして大会に臨みました。

「去年より勝ち進みたい」
なんて色気を出しちゃったせいで、

それがプレッシャーになったのか、熟睡できない日が続きました。

前夜もほとんど眠れず、当日の朝はへろへろのふらふらでしたが

気は張っているので、会場に入るとシャキン☆とします。

1回戦目の相手は麻青龍(あさしょうりゅう)。

子どもたちから大きな歓声が上がりました。
かわいらしい雰囲気の女性で、体格もそう大きなほうではありません。
立ち合い、左を差し右では前まわしを取って、難なく寄り切りました。

2回戦目は、私より20キロ近く重そうなガッチリ体型の○○○○(しこ名、忘れちゃいました)。
動画をあとから夫が見て、彼女はおそらく柔道経験者だろうとの由。

やはり左四つ、右で前三つを取って攻めていきましたが、

相手は肩越しに右上手を取り、腰は伸びて不利&無理と思われる、

その体勢からからだをひねりながら執拗に投げを打ってきます。

以前の私なら、簡単に転がされていたと思いますが、

内くるぶしの真下に重心を置いて必死に残します。

何度も何度も繰り出される投げを残すのに、相当体力を消耗していましたが、

それでも少しずつ相手を土俵際に追い詰めていきました。

最後は、なだれ込むように寄り倒し!
軍配をもらったのですが、なんと物言いがつくではありませんか!
どうやら倒れ込んだときに、私の右膝も早くついていたようなのです。

協議の結果、あろうことか取り直し。
物言いをつけた審判を恨めしく思いました。
本割りで100%出し尽くした私にはもう、ひと欠片の余力もなかったのだから。

手には力が入らず、足はガクガク。

取り直しの一番はあっけなく押し出されてしまいました。

勝っていたはずの、渾身の一番が取り直しになると、もう一番は、

とくに小兵にとっては肉体的にも精神的にもキツイってことを体感しました。
それからは、大相撲を見ていても、物言い取り直しの一番を見る目が俄然変わりました。

取り直しで負けたのはとても悔しかったけれど、あの執拗な投げをこらえきったので、

同時に達成感みたいなものも感じていました。

東京に戻ったその夜は1カ月ぶりに熟睡しました。