ビバ! エイジング

先週末、能楽師の安田登さんと夫による講座が朝日カルチャーセンターで開催されました。
題して「和の身体作法――疲れない体をつくる」
 
土曜の昼下がり、定員以上の方がご参加くださり、
シコトレを中心とした相撲の基本動作、能の舞などの身体技法を
みなさんで実践されたそう。
 
最後は2人1組になって四つに組み合い、
かいなを返すと相手のからだを簡単に浮かすことができる、
という体験までしてもらって、なかなか盛り上がったようです。
 
今週の土曜日(20日)には、同じく朝カル(新宿教室)で夫単独のシコトレ講座がありますので、
ご興味のある方はぜひどうぞ。
 
さて、相撲と能には「神事性」をはじめ、通ずるところが多々あるようで、
これまでにも安田さんとは何度かコラボさせていただいています。
 
安田さんは実にさまざまな活動をされているのですが、
現役時代、夫が安田さんのロルフィングに通っていたのがそもそもの出会い。
 
引退後は、広尾のお寺でなさっている寺子屋にときどきよんでくださったり、
渋谷の神社で創作能を披露されたときに、能舞台に上がって相撲甚句をうたわせてくださったり、
内田樹さんの対談相手(新潮社の「考える人」)として紹介してくださったり、
貴重な経験をいろいろさせていただいているのです。
 
「からだが自由に動かなくなることで、本来のからだの使い方ができるようになる」
というのが二人共通の持論。
 
昨年、ある懇親会でごいっしょしたときに、このご両人が
「歳をとって、からだが利かなくなるのが楽しみですね~」
と、うれしそうに話しているのを横で聞いていた私。
どう反応していいのかわからず、とりあえず笑顔でスルーしておきました~
 
能のお稽古では、声がつぶれて出なくなるまで発声を繰り返し、
そうなって初めて、本来の発声法による、いわゆる「いい声」が出せるようになるのだそうです。
 
本来の発声法とは、のどなどの表面的な部分に頼らずに、
からだのコアな部分(丹田あたりか?)から声を出すこと、だったと思います、たぶん。
(アバウトですみません。今度きちんと確認しておきます!)
 
一方のお相撲。
「かわいがり」と呼ばれる稽古は、まさに声をつぶして「いい声」が生まれるという能のお稽古そのままで、
「もうこれ以上からだが動きません」という状態になったあともなお、ぶつかり稽古を続けることで
本来のからだの使い方ができるようになることを目的としているといいます。
 
つまり、からだの表層筋はもはや使えない状態になっているので、
深層筋(インナーマッスル)をはたらかせる以外、ぶつかっていくことはできない、というわけ。
 
このように、からだが制約を受けると、無駄なエネルギーを使わず効率よくからだを動かす
という本来の使い方ができるようになるということらしいです。
だからこのお二方は、加齢によってからだの自由が制限されることを楽しみにされているんですね。
 
それにしても、アンチエイジンク流行りの昨今、奇特な方たちです。
「抗わない」というよりもむしろ、「積極的に受容」しているところが
すがすがしくさえあります。
 
そんな境地に達することができたら幸せなんでしょうけれど、
ほうれい線もグレイヘアも、小さい文字が見えにくくなるのも
受け入れるのは、そうたやすくはありません~。