母性本能をくすぐるプリンス

先月の30日、近所の小料理屋さんのカウンターでいっしょになった3人組のお客さんが
お相撲の話をされていたので、夫と私もその輪に加わりました。
 
そのなかのご婦人が、「今日は貴ノ花の命日なのよ」とおっしゃいました。
故・貴ノ花さんの大ファンだったそうです。
もちろん、青山斎場での告別式には参列し
その後、半年もの間、喪に服して黒の服しか着なかったのだそうです。
 
す、すごい…。
いまどきは、家族でもそこまでする人は少ないのでは。
 
NHKの相撲中継は欠かさず見て応援したそうですが、
貴ノ花が負けた日は、そんなことがあるはずはないと頭ではわかっていながらも、
大相撲ダイジェスト”では、もしかしたら勝つのではないか、
と深夜にチャンネルを合わせたのだとか。
 
なんとなくわかります、そのファン心理。
否、これはもはやファンを超えて、母親や姉、または妻や恋人のような気持ちで
見守っているんですよね。
 
引きしまったからだと甘いマスクから、“角界のプリンス”と呼ばれた力士。
このご婦人いわく、彼が漂わせる“悲壮感”がよかったのだと。
 
たしかに、悲壮感漂う小兵力士は、
「私が守ってあげなくちゃ」という母性本能をくすぐります。
 
プリンスが亡くなってから、もう8年の歳月が流れたというのに、
ご婦人は、その日も黒の服をお召しでした。
 
ここまで愛される貴ノ花さんは幸せだと思うとともに、
やはり国民的ヒーローとして世間を熱狂させたお方、
魅力的なお相撲さんだったのだと再認識しました。