興に乗じて相撲甚句♪

相撲甚句」は相撲教習所の履修科目にあるので、
お相撲さんは一様に、それを新弟子時代に教わっています。
 
だからといって、お相撲さんのみんなが相撲甚句を唄えるかというと、そうでもないのが実情のようです。
教習所で習っても、たいていそれっきりになってしまって、人前で唄えるまでにはならないのだそうです。
 
そんなわけで近ごろ、巡業での甚句の唄い手不足に悩む協会から各部屋に、
相撲甚句を唄える(唄えそうな)力士を、自他を問わず推薦してください」
といった旨のお達しがあったそうです。
 
夫は巡業で唄ったことはありませんでした。
もともと人前で歌を歌うこと自体が苦手だったといいますが、
私が知り合ったときにはすでに、カラオケも大好きで張り切って歌うし、
宴会などで盛り上がり、気分が乗ってくると、みなさんに甚句を披露するような人だったので、
“苦手”とはにわかには信じられません。
 
頼まれればもちろん、頼まれなくても、うれしいときや感謝の気持ちを表したいときに唄いはじめます。
たとえば、私の親戚一同が集まる伯母の家に結婚のあいさつに訪れたときに
大歓迎を受けて嬉しくなっちゃった夫は、歓待へのお礼の気持ちを込めて、
お暇する前に甚句を唄ったこともありました。
私が若いころお世話になったご家族のお宅に招かれたときも同様です。
 
いまでは、講演先やシコトレ講座などの場でも積極的に唄っているようです。
サービス精神とみなさんにお相撲をより深く知っていただきたい気持ちからだと思います。
 
こんなふうに、居酒屋、レストラン、宴会場、個人宅、講堂、教室などなど、
夫が甚句を唄う場所はさまざま。
前回書いた橋の下に加えて、お寺の本堂も声がよく響いた場所のひとつです。