いい香り、だけど実は…・。

鬢付け油の原料は、ハゼの木の実の油(木蝋)。
“ジャパンワックス”と呼ばれ、欧米にも輸出されている木蝋には、
ほかのワックスにはない独特の粘りがあるそうで、
木蝋でなければ、お相撲における激しいぶつかり合いに、結った髷はバラバラになってしまうのだとか。
 
逆にいえば、それだけしっかり固まっているわけですから、落とすのがたいへんということ。
 
お相撲さんがシャンプーするのは、週に1回程度なんですが、
(最近のお相撲さんはもう少し高頻度らしいです…)
夫いわく、洗髪は一苦労だったそうです。
 
油をしっかり落とそうと思うと、シャンプーをほぼ1本使ってしまうそうで、
時間も労力もかかるので、洗髪する日はちょっとした決心が必要だったとか。
 
そろそろ髪の毛を洗いたいなと思っても、
体調のすぐれないときには、「今日はやめておこう」ということになっちゃったり。
 
一昔前の巡業では、お水しか出ないところもあったそうですが、
熱いお湯でないと、とてもじゃないけれど油は落ちないので、
お湯が使えないときはシャンプーではなくて “ママレモン”(食器用洗剤)を使ったんだとか。
ワイルドですね~
 
毎日稽古で汗をたっぷりかいているのに、1週間洗えないのもつらいと思うけれど、
洗うのもまたたいへん。相撲稼業もラクじゃあないです。
 
そういうわけですから、引退したお相撲さんが「よかったこと」として
決まって「毎日髪の毛を洗えること」を挙げるのは納得。
 
夫もご多分にもれず、「毎日簡単に髪の毛を洗えるのがうれしかった」と
引退当時を振り返って、よく話しています。
 
私にとって、夫が引退して「よかったこと」のひとつに、「枕カバーをキレイに保てること」があります。
汗だけでなく、砂やホコリにまみれ、そこに「独特の粘り」のある油もプラスされているため、
枕カバーをいくら洗っても、油はもちろん汚れがちっとも落ちないのです。
 
油をつけていないいまは、洗濯機で普通に洗えばさっぱりとキレイになるので、私もラクになりました♪