不知火型の「目黒のさんま」

今月は、桂右團治師匠の落語会にいってきました。
右團治師匠がほぼ月1回、築地のお蕎麦屋さんの二階で行う、本寸法の落語会☆
 
落語芸術協会初の女性真打ちである右團治師匠の落語は、歌武蔵師匠のそれとは対照的。
ド迫力の歌武蔵師匠に対し、やわらかさと穏やかさ、そして気負いのなさが右團治師匠のもち味。
日舞の経験がおありだからか、手振りがたおやかです。
(ちなみに帯は腹の下で結び、男性モノの着物を男性っぽくお召しです)
高座に上がったときの堂々たる佇まいと、素のときの物腰やわらかでかわいらしい雰囲気。
そのギャップの大きさに「プロ」を感じさせ、そんな彼女に私は魅せられています。
 
この「右團治噺」と銘打った落語会の、今回のゲストは真打ち間近の三升家う勝さん。
この方も、歌武蔵師匠に負けないくらいユニークな経歴をお持ちで、
旅行代理店と葬儀屋さんでのサラリーマン生活を経て、37歳で落語家に。
現在、千葉大学文学部の学生さん。
今年、『槇の家』という小説で千葉文学賞を受賞されたそうです。
 
う勝さんがおっしゃるには、横綱土俵入りに雲龍型と不知火型があるように
「目黒のさんま」にも二型あるのだそうで、今回ご披露くださったのは、いわば不知火型。
現在ではほとんど演じられることのない型だそうです。
 
不知火型の「目黒のさんま」が雲龍型のそれと異なるところは主に、
重臣らの余計な気遣いで、塩気と脂を抜いて調理されたパサパサのまずいさんまを食べさせられたのが、
目黒でさんまを食べてきた殿様本人ではなく、そのおいしさを聞かされた別の殿様という点でした。
 
不知火型の土俵入りをする横綱は全体としては少ないけれど、いまの横綱は二人とも不知火型。
不知火型の「目黒のさんま」を演じる噺家さんも、増える時期が来るかも?