土俵を去る日

夫は6年前の九州場所をもって引退しました。
最後の相撲は13日目だったので、6年前の昨日ということになります。

その23日前に、日刊スポーツが夫の引退をほのめかす記事を掲載したせいか、
午前中の館内はいつもは静かなのですが、この日はお客さんも心なしか多かったようです。
私の友人のなかには、わざわざ東京から来てくれた人もいたほど。

さらに、驚いたのは報道陣の多さ。
夫の取組の少し前から土俵下にドドドーっと押し寄せ、異様な雰囲気があたりを覆いました。

さて、33負で迎えた一番は、20歳以上若い力士にあっけなく敗れて、
四半世紀に及ぶ相撲人生は幕切れ。

夫は、負けが悔しいという顔つきで花道を引き上げていきました。
彼にとっては、最後の一番も、これまで一生懸命向き合ってきた一番一番と変わりなかったのだと思います。

報道陣は、花道を引き上げる夫を追うように、足早に土俵下を去ってゆき、
つぎに土俵に上がった力士たちが気の毒に思えたほどでした。

その後、花道の奥でずいぶん長く取材が続いたようです。
お風呂に入り、着物に着替え、支度部屋を出てくるまでにかなりの時間が経っていました。

「そろそろ出てきますよ」
知り合いの相撲記者さんが知らせにきてくださったので、正面玄関近くで待っていたのですが、
国際センター前から迎えのクルマに乗り込むまで、報道陣に取り囲まれたままだったので、
私はその様子をただただ遠巻きにして見るばかりでした。
 
私が「お疲れさま」を言えたのは、夫がクルマのなかから電話をくれたときでした。

ところで、国際センターをあとにする夫は花束を手にしていました。
その花束の贈り主は、お相撲さんのみならず親方衆もみんな知っているという、
いやいや相撲ファンの間でもかなり有名な(もちろん私も存じております)相撲女子のT子さん。

さすがは、若いお相撲さんからベテラン力士まで、のべつ声を掛け、
ほとんど全力士と顔見知りなんじゃないかと思われるT子さん!
ちゃんと夫の最後の相撲と知って用意してくださったんですね~

まさに引退に花を添えてくださって、感謝しています。
いまさらですが、ありがとうございました☆