大入りの願いが込められた相撲字
前回は番付表の「型」について書きました。
今日は番付表の「文字」について。
この文字は相撲字といわれ、書くのは行司さん。
根岸流とも呼ばれるのは、
江戸~大正時代まで番付表の版元だった三河屋根岸治右衛門の名にちなんでいます。
観客の大入りの縁起を担いで、白地の部分が少なくなるように肉太に書かれますが、
筆の穂先だけでなく、穂の側面まで使って書くそう。
私のたしなむ書道の筆づかいとはずいぶん異なります。
直線的で力強く肉太といえば、千社札に用いられる籠文字も同様ですが、
丸みのある相撲字に対して、こちらは四角い書体です。
〔相撲字〕
〔芝居文字〕
〔寄席文字〕
〔籠文字〕
相撲、歌舞伎、寄席いずれの看板ももともと、
相撲字は寛政年間に、勘亭流は安永年間に、寄席文字は勘亭流と提灯文字をもとにして
つくられたといいますから、ほぼ同じころそれぞれに分かれていったということになります。
200年以上、書き継がれてきた江戸文字たち。
これからも伝え続けていってほしい大切な文化ですが、継承者の漸減が心配です。
しかし相撲字については、行司さんによって書かれていることから、
相撲が続く限り、継承されていくはず。
土俵築きを担う呼出さんや髷を結う床山さんも、職人技の継承者。
彼らを相撲協会が自前で抱えているのも、目先の利ばかりでなく、
100年単位(いやいや、それ以上かも?!)で行く末を見通してのことでしょう。
相撲のすごさはこんなふうに、時代を超えて存続可能なように制度設計されているところです。