「申し合い」の真の目的

「申し合い稽古」では、何十人もの力士がひとつの土俵を囲みます。
勝負に勝ったほうが次の相手を指名するので、勝ち続ければ何十番と稽古ができるけれど、
指名してもらえないと、まったく相撲が取れません。
 
土俵を取り囲んでいる力士たちは、自分を指名してもらうために、
勝負がつく瞬間に、土俵のどちらにいればいいか察知して動かなければなりません。
 
夫いわく
「調子のいいときは、勝ち力士とうまく目が合って、どんどん指名してもらえるが、
調子が悪いと、逆に逆にいってしまって、2時間やって1番も買って(指名して)もらえないときもある」そう。
 
いまでは積極性を培うための稽古ととらえられている面が強いようですが、それに加えて
勝負を見る目や、俯瞰したり、機をとらえたりする、とても重要な能力を養うための、
能や武道にも通ずるいかにも日本的といえる稽古です。
 
スポーツ科学的には、非常に不合理であるからして、
土俵を増やして公平に番数をやらせたほうがいいということらしいです。
 
しかし、稽古の番数をこなすことよりもむしろ、
自分とその周囲を俯瞰すること、つまり次の勝負を予想して動き、
機をとらえて自分をアピールすることを通して強くなる。
「申し合い」とは本来、そういうことを目的にした稽古なのだろうと夫はいいます。