ローマは一日にして成らず。

相撲字は、できるだけ太く書くことが求められるため、
墨汁の消費はさぞかし激しかろうと、木村悟志さんに尋ねてみました。
 
墨をたっぷりつけると、乾くのに時間がかかってしまって仕事が捗らないので、
むしろ墨はつけすぎないよう注意しなければならないそうです。
 
墨が足りないと、あの黒々とした太い字は書けないし、多すぎると乾くのに長い時間を要する…。
この加減ってかなり微妙でむずかしいと思うのですが、悟志さんはいともたやすげに言うのです。
来る日も来る日もお稽古しているから、その微妙な調整ができるようになるのでしょう。
 
悟志さんは入門8年目の、三段目格の行司さん。
いまも毎日お稽古し、毎日提出しなければならないのだそうです。
 
お相撲さんの修行もたいへんだけれど、行司さんも同じくたいへん。
どんな道も極めるのは楽じゃあ、ありません。
 
子どものころ習っていた書道を再開してから4年ほど経ちますが、
なかなか上達しなくて、嫌気が差すこともあります。
だけど行司さんの修行を思えば、私なんてまだまだひよっこ
コツコツ、気長にいこうと、励まされる思いです。