叩き込みが増えたのは‥‥‥

「叩き込み」が増えたのは、千秋楽の放送で話題になったとおり、
叩くと簡単に落ちる、体重をもて余し気味の力士が増え、
ならばと安易に叩きにいく力士も増えたからだろうと思います。
 
それからもうひとつ、私が常々その理由のひとつと考えているのは、
目の前の1勝へのこだわりが強くなりすぎているからではないか、ということです。
 
いまや“スピード感”をキーワードに、すぐに結果が求められる世の中。
じっくり時間をかけて変化すべき、たとえば政治や教育などの分野にもスピードと、
それ故に効率が求められ、すぐに結果が出なければ“ダメ”と結論され、
責任を取らされてしまう――いま世の中全体がそんな空気に包まれています。
 
相撲界もご多分にもれず…。
「三年先の稽古」という言葉がありますが、もしかしたらいまはもう死語に近いのかもしれません。
 
この一番に勝ちたい、その気持ちはみんな同じはず。
でももっといえば強くなりたいから毎日稽古しているのであって、
その延長線上に本場所があり、その結果が勝敗となって表れるだけならば、
勝ち負けよりもどんな相撲を取るか、稽古してきたことをいかに出すかが重要なのではなかろうか、
そう思います。
 
いま稽古していることは、ようやく三年先に実るのだとすれば、
三年先に結果を出せればいいということになりますから、
逆に気楽に臨めるかもしれません。
 
そう考えると、勝つためだけの安易な叩きは必要ないってことになりますね。